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12星座の物語
第七話「彼らの近況報告(直樹)」

――直樹の部屋
携帯が鳴る

<直樹> もしもし。
<遼> よっオレ 元気?今、どこ?
<直樹> 家だよ。
<遼> 珍しいな、こんな真昼間から家にいるなんてさ。どうせまたどっかの娘とデートかと思ったよ。
<直樹> バカ言ってんじゃないよ。日曜ならデートという読みが浅いんだよ。ところで何か用事か?
<遼> 昨日久しぶりに孝司から電話あってさ、みんなで一杯やんないかって。お前都合どう?
<直樹> いつ?
<遼> 明日の晩。
<直樹> 明日か。明日はちょっとおとなしくしていようかと思ったんだけど、そのメンバーじゃ行くしかないな。
<遼> なんせお前が一番捕まえ難いんだから、これで決まりだな。後はオレから連絡しておくよ。じゃ7時、いつものとこで。
<直樹> わかった。じゃ。
――レゲエの流れるダーツバー
すでに孝司と遼が来ている。二人を見つけ近づく直樹

<直樹> おぉ、待った?
二人の肩を軽くたたく

<直樹> 徹はまだ?
<孝司> もうすぐ来るだろ。少し遅くなるって言ってたから。しかし久しぶりだな。まずは再会を祝して乾杯!!
三人ジョッキを交わす

<遼> なんか直樹イキイキとした顔してるなぁ。
<直樹> そうか。お前こそ変人っぽさが少し抜けて、今日は真っ当な人間に見えるよ。
<遼> バカ言うんじゃないよ。何の基準を持って真っ当とか変人が決まるんだよ。オレは自分が変わっているなんて思ったこともないよ。
<直樹> そこがすでに変わってんだよ。
一同笑う

<孝司> まぁまぁ 二人でそういう話始めたらきりがないんだから。マイクの取り合いでさ。しらふのうちからこれじゃ思いやられるよ。
<直樹> こいつがすぐ吹っかけてくるからさ。ごめんごめん。孝司、ここまで不況が続くとIT業界と言えどもかなり影響があるんだろ?
<孝司> 影響なんてもんじゃないよ。ガタガタ。まぁプライベートな生活を考えれば、自由な時間が増えたけどね。その点は良かったな。何しろ一番忙しい頃は、睡眠時間ゼロなんて、よくあったもんな。
<遼> そうか。じゃ又絵の方やってんのか?
<孝司> まぁボチボチだけどね。
<遼> 孝司も凝り性だからな。料理を作らせりゃ右に出るものはいないし、お前も少しは見習って、一つの事に一度でもいいから集中してみろよ。とにかく、あっちこっちすぐ変わっちゃうんだから。
<直樹> バカだなぁ それがオレの魅力だろうが。何も一つの事を深くばかりが人生じゃないだろう。広く浅くどんな話題にもついていけるというのもいいもんだよ。オレはむしろそれを目指すね。
徹が入ってくる。三人手を挙げる

<徹> 悪い悪い。待っただろ。
<孝司> 大丈夫だよ。まず何か飲めよ。
みんなの飲み物を見渡し同じ物を注文する徹

<直樹> 仕事大変そうだなぁ
<徹> 一つ急ぎの入稿があってさ。でも何とか間に合ったよ。いやぁーいい仕事の後の酒ってのは、旨いよなぁ。今日はトコトン飲むぞ。
<孝司> 徹がトコトンなんて言うと恐ろしいよ。
近況報告をする4人

<孝司> おまえら彼女は元気? 続いているんだろ?
<遼> お前らって彼女のいないオレに、その質問はないだろ。
<直樹> お前はいないんじゃなくて、作らないんだろ。
<遼> なんで。そんなことはないよ。
<徹> とにかく好みがうるさいんだよなぁ。
<遼> うるさいんじゃないよ。でも自分の中にあるこだわりは、やっぱり譲れないよな。
<直樹> それがすなわち好みがうるさいってことなんだよ。自分の中にあるタイプなんて、相手によって変わっちゃうけどなぁ。だから「どんなタイプの女の人が好き」と聞かれると、ホント困っちゃう。「君です。君の全てが僕のタイプです」なんて、答えになっちゃうんだよね。でもホントなんだから、しょうがない。
一同、呆れたように笑う

<孝司> ちょっと待ってくれよ。そんなヤツは直樹だけだろ。
<徹> いいやぁ、オレもどっちかって言うと直樹の方だよ。
<直樹> そうだよなぁ。これこそなんて思ったって、それとまったく違うタイプに惚れてしまえばそれまでだろ。
<遼> 要するにお前らはいい加減なんだよ。女性に対して哲学というものを持ってないんだから。
<直樹> 冗談じゃないよ。持っているに決まってるだろ。だけど、自分自身が変わっていっちゃうんだからどうしようもないだろ。
<徹> そうだよな。まぁある意味オレと直樹は似ているんだろうな。だけどオレの場合はこれぞと思ったら一途だし、付き合っている限りは情熱的だよ。直樹はその辺が違うんだよなぁ。何だかいつも冷めているというか、自分を客観的に 見ているというか。
<直樹> 冷めているんじゃないんだけど、どんな時も、もう一人の自分が居て、どっかから見つめられているような気がするんだよね。
<孝司> やっぱり手放しでというのは直樹には難しいのかもしれないね。オレはそういうクールさに憧れるけどね。
<遼> じゃ孝司は違うってわけか。まぁ見てりゃわかるけどな。
<孝司> だろ。正反対かもしれないよ。だってまずどんなに思っていてもすぐに行動に移せない、むしろあまり気がないような態度すらとってしまう。そのくせすごく想っている。でも 相手に積極的に来られると逃げ腰になる。自分でも情けないと思うよ。まったく。
<徹> そうだなぁ。積極的なオレたちから見るとちょっと信じられないね。確かに。直樹、ゆきちゃん、元気?
<直樹> うん、元気だよ。
<遼> そろそろ結婚なんじゃないの。彼女そういうタイプだろ。いつまでもはっきりしてやらないと、きっと発作起こすぞ。あの手の娘って。
<直樹> 結婚は今のところ全く考えてない。
<孝司> ええー、前はそんな感じじゃなかったよね。
<遼> コイツに前は、なんて言うのは全くのナンセンスだよ。一分前に言ったことさえ変わるんだ。さては誰かできたな。
<直樹> まぁそういったとこかな。
<孝司> かなぁって、はっきり言えよ。
<直樹> できた。
<徹> これだからな。直樹と付き合う女は苦労するわけだ。それで今度はそっちがいいのか?
<直樹> そこまでははっきり言えないよ。全く違うタイプだから。
<孝司> ちょっと、ちょっと。両方愛してるなんて言わないでくれよ。
<直樹> それすらはっきり言ってわからない。
<孝司> でもそういうのってやっぱり罪だよ。当然ゆきちゃんは知らないんだろ? あんないい子、滅多にいないじゃない。傷つけるなんて、残酷すぎるよ。
<直樹> 口に出して言ってはいない。言う必要もないと思ってる。
<徹> しかしなぁ…そこはやっぱり、言ってやるのがせめてもの誠意なんじゃないのか。変わるのはしょうがないとしてもさ。
<直樹> そうかなぁ。でも、何故一人の人間がもう一人の人間の心や身体、そして行動まで縛る権利があるわけ。ただ付き合っているという理由から。オレはいつも思うんだ。人間はもともと一人だとね。だから相手が同じことをしても、きっとその時はオレの魅力が足りなかったんだなぁと思うと思う。女も男もこの地球上には無数にいるんだよ。一人の人しか見えないということの方が、不自然な気がするけどなぁ。
<孝司> ちょっと待ってよ。そりゃ単に男の身勝手な理論じゃない。そんな風に生き始めたら、動物と人間の差もないじゃないか。単に本能の赴くままなんて。
<遼> 孝司の言うことも正しいと思う。だけど直樹の言うこともある意味一理あるよな。ただそれを言い切れる人間というのはかなり自信がないとね。じゃなくちゃそんなこと言えないだろ。相手を縛り自分も縛られという方が、はるかに楽だもんね。だから、もし直樹の言ったようなことを言える女が現れたら、オレはそれだけで惚れてしまうかもしれない。
<直樹> 男女の仲で大切なことは一途だとか決して裏切らないとかじゃないよ。お互いが一緒にいることによって、どこまで成長できる仲なのか、ということなんじゃないのかな…。そしてそういう相手に出会うと、どうしてもその人が必要になり、誰のところへも行かないし行きたくもなくなる、それは縛ったからじゃなくてね。それが本当の付き合いだと思う。束縛し合ってお互いの可能性を殺しあうような仲は全く無意味だよ。
<孝司> だけど一般的には、女にとってお前のような考えの男は、たまらないと思うな。辛すぎるよ、やっぱり。
<遼> だけど、コイツは相手の事も縛らないからいいんだよ。くだらないヤツは自分は好き勝手しておいてさ、自分の彼女には、あれも駄目これも駄目って言い出すだろ。そういう男、山ほどいるよ。
<孝司> それはわかるけど、その縛らないということ自体が、女にとっては寂しいことなんだよ。オレに言わせれば、縛って欲しいなんて言ってくれる女の方が、はるかに魅力的だけどなぁ。そして、そんな彼女を見て、こちらも絶対裏切らないと誓うものだろ。
<直樹> 孝司の言っていることも、わからないわけじゃないけど、オレのスタイルではないんだよね。それにしても、久しぶりに会って何だか恋愛論になっちゃったな。もうこの辺にしようぜ。今更恋愛論交わす年でもないだろ。
<徹> そりゃ言える。しかしなぁー、大きなお世話だろうけど、ゆきちゃんとははっきりさせた方がいいぞ。彼女のように思い込むタイプは恐ろしいぞ。最後にお前、痛い目にあうよ。これだけは言っておくよ。
<直樹> あぁ、経験者の意見は尊重するよ。
<徹> ふざけてんじゃねぇよ。
<遼> それから、妊娠だけは気を付けろよ。妊娠させたら、どんなにお前がぐちゃぐちゃ言ったって、人生変わるぞ。お前のスタイルなんて、通用しなくなるからな。妊娠で人生が選択できなくなるのは、女じゃない、男なんだぞ。
<直樹> わかったよ。オレのこと心配してくれるのは嬉しいけど、もっと楽しい話をしようよ。またみんなでスキーでも行くなら、オレ企画するよ。せっかく旅行社にいるんだんからさ。
<孝司> いいね。徹もいいとこ知っているだろ。二人で計画してよ。
<直樹> OK。考えとくよ。
<孝司> やっぱり昔からの仲間はいいよな。又ちょくちょく会おうぜ。
みんな頷く。徹はマイペースで、携帯のメールをチェックしている

<直樹> おい、徹、人の話し聞いているのか。まったく自己中な男だな。関心がない話だと、それを隠そうともしないもんな。もう少し大人になれよ。「気遣い」って言葉の存在すら、お前は知らないんだろ。
一同、笑う。遼は徹に向かって、耳に手をダンボのように当ててみせる

<徹> 何、言うんだよ。聞いていたよ。スキーだろ。そんなに聞いて欲しいなら、オレが食らいつくようなこと、話してみろよ。例えば「人生の意味は何か」とかさ。
<遼> これを徹が言い出したら、かなり酔ってきた証拠だぞ。そろそろ退散するか。
<徹> なんだよ。折角面白くなってきたのに。それとも久しぶりにダーツでもしようか。
<孝司> オレは付き合ってもいいよ。
<直樹> 孝司は優しすぎ。コイツ付け上がらせたら、こっちも朝まで、帰れないぞ。
<遼> じゃ、コイツら二人残して、帰るか。
<直樹> そうしよう。孝司、いい?
<孝司> あぁ、いいよ。またゆっくり会おう。
<遼> もう、帰るのか。明日を気にするようになったら、人生、おしまいだな。まぁ年寄りは相手にせずに、孝司、二人で楽しもう。じゃーな。
直樹、遼、立ち上がる。孝司、二人を見送るように手を振る。徹は二人のことには見向きもせず、さっさとダーツの前に移動する

――直樹の部屋
携帯が鳴る。ゆきからなので出ない直樹、メッセージが入ったことを確認して聞く

「もしもし、ゆきです。どこに行ってたのなんて聞かない…。また怒るから。でもどうしても声が聴きたいのー。遅くてもいいから帰ったら電話して。お願いだから。」
どうしようかと迷いながらもゆきと話す気になれない直樹。そのままシャワーを浴びる。部屋ではまた携帯が鳴っている。シャワーから出るともう一度電話。直樹は電源を切りすっきりしない気分のまま眠りにつく


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