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12星座の物語
第四話「節子との再会」
――節子の会社 午前中
節子、上司のデスクへ。上司、節子の差し出した報告書を見ながら
<上司>お疲れさま。いつ見てもきちんとした書類だね。じゃ精算するものはこれでよし、と。帰ってきたばかりで悪いけど、これ次のスケジュールのたたき台。ちょっと目を通しておいてくれる?
<節子> はい、わかりました。
席に戻る節子 日程表に目を通している しばらくして席を立ち上司の方に向かう
<節子> すみません。今いただいた日程表の件なんですけど、これ前回と同じですよね。これだとかなりきついですよ。今回高齢の方が参加対象だし、ここで一日取るか夕方の便にしないと。
バリバリ仕事をこなしていく 真剣な顔の節子
<上司>そうか。君の言う事なら確かだなぁ。よし、立て直してくれ。至急。
<節子> はい、わかりました。やってみます。
節子席につく 同時に携帯が鳴る
<節子> もしもし。
<直樹> もしもし、えーっと石和と申しますが…
<節子> 失礼ですが、どちらの?
<直樹> あのーエジプトで
<節子> あっ、ちょっと待って下さいね。
慌てて廊下に出る節子
<節子> わぁーやっぱり。石和さんだと思ったんけど、もし違ってたらいけないと思って。会社の番号しか登録してなかったから、わからなかったの。これが携帯の番号?
<直樹> うん、そう。
<節子> こんなに早く電話くれるなんて、感激!!
<直樹> 本当は昨日の夜にかけたかったんだけど、疲れているところを邪魔したくなかったから、遠慮したんだよね。
<節子> お気遣いありがとう。でもそんな気は使わないでね。石和さんならいつでも大歓迎だから。
<直樹> それは光栄だなぁ。ところで仕事はどう? 忙しい?
<節子> うん。今スケジュールもらってね。これが大馬鹿な日程なの。こんなの作る人って信じられない。ごめん、ごめん。こんな事はどうでもいいことだけど。
<直樹> 大変だね。頑張ってね。今夜あたりは、じゃ無理かなぁ。一杯どうかなと思って。
<節子> 大丈夫。大丈夫。優先順位が明確なのが私の特技だから(笑) でも、たぶん7時半位になっちゃうけどいい?
<直樹> 僕は構わないよ。明日は休み?
<節子> そうじゃないけど、そんなの気にしないで。
<直樹> じゃゆっくり飲もう。東京で会ったらひどいなんて言われないように、今夜は張り切って行かなきゃ。
<節子> あら、まだ覚えていたの? 逆パターンにならないように、私も頑張って行きます。では後ほど。あぁ大切なこと忘れちゃった。場所は?
<直樹> タカノの前はどう? 会えなかったら携帯鳴らすよ。
<節子> はい。じゃ後でね。
節子、直樹の声を聞き妙に気分が高ぶってしまう。今日会うならもっといい服を着てくれば良かったと考える。頭の中はそれで一杯になってしまう。一刻も早く終わらせようと張り切って仕事をする
――新宿タカノ前
節子を探している直樹 遠くから走ってくる節子 息を切らしてくる
<直樹> 久しぶり。
満面に笑みをたたえながら、どこか恥ずかしそうな直樹
<節子> ホント久しぶり。元気だった?
<直樹> うん。でも君がまだ海外の空を飛んでいると思うと寂しかったけどね。
<節子> もーう、そういうキザな事が簡単に言えるんだから、石和さんって。 でも素直に嬉しいけどね。
<直樹> さて、どこへ行くか。僕が決めてもいい?
<節子> 勿論、でもまさかコーヒーじゃないでしょ。
笑いながら歩き始める二人
<直樹> またキザって言われるかもしれないけれど、君ってホントに綺麗だね。でもいつもそんなにきめて出勤してるの?
<節子> まさか。一回家に帰ったの。着替えにね。あんまりダサいと嫌われちゃうからね。
<直樹> そんなに近いの? 会社と。
<節子> 10分位のところ。私って実用的に考えるから、近いにこしたことはないと。
<直樹> でも、プライバシーがないんじゃない?
<節子> 平気よ。仕事は仕事。自由な時間は他の人には関係ないもの。誰が何を見て何を言っても気にならない。気になるのは心から好きな人に言われた時だけ。
<直樹> 強いんだね。君は。僕は意外と気にするんだよね。小心なのかもしれないね。
<節子> それは意外だなぁ。
開放的なのにどこかシャイで何も見せていないような魅力に、どんどん引き込まれていく節子
――串焼きの店
<直樹> この店来たことある?
<節子> 初めて、こんないい所あったんだ。新宿にも。
<直樹> ここなら気に入ってくれるかなと思って。
<節子> 和食に飢えてたし、最高。
直樹、店員に向かって
<直樹> じゃまずはビール。それから…
節子をちらっと見て
僕が決めてもいい?
<節子> お願いします。でもレバーはやめてね。苦手なの。
直樹 節子をみて頷く
<直樹> このセットをお願いします。
<店員>かしこまりました。
ビールを注ぎあう二人。乾杯する
<直樹> あのあとツアーどうだった? 問題なし?
<節子> そうね。あぁ一人パスポート失くしたって大騒ぎになっちゃって。
結局はポケットの中にあって、一件落着。よくあるのよね。そういうのって。
<直樹> あれ一番腹立つよなぁ。あちこち探して挙句の果て、あぁやっぱりありましたじゃかなわないよ。
<節子> 最近つくづく感じるけど、人に使われてるのって、ホント嫌ね。独立したいなぁって思うわ。
<直樹> 同感。いくら頑張っても何か虚しいよね。僕も自分の会社、始めたいよ。
<節子> しましょうよ。人間やっぱり夢がないとね。でもまずは旅行業の免許取らなきゃね。
<直樹> 僕、持ってるよ。
<節子> えぇすごーい。いつ取ったの?
<直樹> もうかなり前。でも君だったらすぐ取れると思うよ。旅行業界というものをよく知ってるし、経験もあるし、かなりの科目が免除になるからね。
<節子> そうかしら。それにしても石和さんってすごいわね。アラビア語は出来るし、いつそんなに勉強したの?
<直樹> 学生時代に少々ね。人があまり出来ない言語が勉強したかったからアラビア語を選んだんだけど、僕の知識はどれも浅い物ばかりだよ。どうも深く物事を追求するのは苦手なんだよなぁ~。もう少し根性があれば、ちっとはましな人間になっていたんだけれど。
<節子> またまたご謙遜を。私も一つこれを機に挑戦してみようかな。
<直樹> そうしたらいいよ。目標があると楽しいよね。
<節子> ホントそうよね。
<直樹> いつか二人で組んで仕事したいな。成功間違いなしだよね。
仕事の話で盛り上がる二人。ある意味同性といる気楽さがある。でも人一倍異性を感じさせる節子。節子も直樹に対して同じ事を考えていた。席を立つ二人。会計のカウンター。直樹が支払いをしようとする。節子、直樹を引っ張る。
<節子> だめよ。エジプトの時約束したじゃない。私が今度はご馳走するって。
<直樹> そうだっけ。じゃ今度にして。どんどん約束を延ばせば、まだまだ君と会えるでしょ。僕はその方がはるかに嬉しいな。
<節子> バカなこと言わないで。会いたいのは私なんだから。
――店の前の路上
<節子> こう何回もご馳走になると来づらくなっちゃうわ。
<直樹> これが最後じゃあるまいし、さぁーて今度はどこに行くか…
<節子> 私に任せて。これでも学生の頃はホント良く来たのよ。新宿は。
――カフェバー
ジャズが流れている。カウンターといくつかの席があるだけの小さな店
<節子> どう? こういう所好き?
<直樹> うーん大好きだよ。よくわかったね。
<節子> でも石和さんってどんな所でも気に入ってくれそうじゃない。自分の方を合わせてくれるというか。
<直樹> そうかなぁ。僕の中では結構好みがはっきりしているんだけどなぁ。女性の好みと同様に。
<節子> そう? でもこれも同じく誰にでも合わせられる。でしょ?
<直樹> そりゃあんまりだよ。嫌いな女の子になんか、これほどひどい男はいないよ。
<節子> 嘘ばーっかり。
笑いころげる二人。どんどん乾杯を重ねる。ふと我にかえった顔をする節子。 直樹の耳に小声で
<節子> いけない。ここってもっとムード出して飲む店なのに、ついつい学生の乗りで騒いじゃったね。まぁあんまり関係ないけどね。
<直樹> 混んでないから大丈夫でしょ。それにしても時間がたつのが早いなぁ。君といたら、すぐ年取っちゃうね。
<節子> 喜んだらいいのか、悲しむべきか、微妙。あぁ、そうそう携帯のメアド教えてくれない。私のはこれ。
<直樹> じゃ今送るよ。
<節子> ありがとう。
次から次に話が弾む二人。ついに閉店になる。 レジ、節子、直樹を突き飛ばすように押して支払いをする。店の前から大通りへ
<直樹> いやぁ すごい力だね。危うく骨折するところだったよ。
<節子> オーバーね。でも私、力はありますよ。鍛え方が違うからね。その辺の男には負けません。ほーら
腕をまくって筋肉を作って見せる。直樹、おどけて恐ろしいという顔をする。ボクシングのフォームでじゃれあう二人。
節子、立ち止まる。大声で
<節子> 石和直樹殿。あなたは大変いい人なので特別に節子姫のお友達にしてあげます。
<直樹> 姫、それは大変光栄でございます。慎んでお受け致します。
<節子> なかなか素直でよろしい。
吹きだす二人。時計を見る直樹
<直樹> いつも二人でいると遅くなるね。もう4時だよ。
タクシーを拾う
<直樹> 僕も一緒に乗っていく。
<節子> そう。でも平気よ。私一人でも。
<直樹> そんなのわかってるよ。一緒にいたいから言ってるんだから。
二人タクシーに乗り込む。またしゃべり続ける二人。直樹、節子の手を握り締める。タクシーは節子の家の前で止まる。
<節子> ホントはこのまま一緒に居たいけど…。ちょっとだけ降りてくれる?
頷く直樹
<節子> 運転手さん、ちょっと待ってて下さいね。
直樹の手を引いてどんどんマンションの方に歩いていく節子。 植え込みの近くまで来て立ち止まる。節子、いきなり直樹に飛びつく。
<節子> 大好き ホントにだーい好き。酔って言ってるんじゃないからね。
離れる節子。直樹を見つめて
<節子> 今日も楽しかった。ありがとう。じゃもう行って。タクシー待ってるから。
呆気に取られる直樹。しかし何故かさわやかな節子の行動になおさら愛しさが募る
<直樹> 僕も本当に楽しかった。もう一回こっちを向いて。
微笑む直樹
じゃね。
小走りにタクシーに戻って行く。マンションへ消えていく節子。タクシーに乗り込む直樹
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