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12星座の物語
第三話「彼女達の近況報告(ゆき)」

――タイ料理レストラン

<千比呂> こうして皆で会えるのってなかなかないね。最近。
取りあえず近況報告といく? あぁまずは乾杯ね。
四人揃って乾杯する

<しのぶ> そうそう、今日はコースで予約してあるからね。ここのはボリュームもあって、美味しくて、すごくお得なのよ。仕事でもよく使っているの。みんなコースで良かったでしょ。
みんな頷く

<千比呂> 勿論、いつも幹事任せてごめんね。助かります。ところでしのぶ、この頃仕事はどう? 不況だとやっぱり影響大?
<しのぶ> まだまだ大変だけど、最近少しは快復してきたかなぁ。億ションの売れ行きもいいし。要するに貧富の差が激しくなったのかもね。私もいつかはそんなところを買えるように、日々頑張っているわけよ。
<絹代> しのぶは昔から努力家だものね。私たちの商売も二極化してきた感じ。 どんなに高くても買う層と、少しでも安いのを求める層とね。景気の回復はあんまり実感できないけどね。
<ゆき> そうか。どこも色々あるんだね。その点旅行業界は、まぁまぁってとこかなぁ。多少景気の影響はあるけどね。安いツアーはまだ人気があるし。マーケットが大きいからね。
<千比呂> そうよね。海外に行く人の数、すごいものね。それにしても、自分で選んだとは言え、スチュアーデスなんてホント嫌な仕事。世界中あちこち行ってカッコイイみたいだけど、所詮空の上のウェートレス。なまじ誰でも海外旅行出来るようになっただけに、質が悪い人が多くなっちゃって。楽じゃないわよ。仕事とは言え、何時間もサービスしていると、オフの時は人と話すことも出来なくなっちゃう。まぁ、自分が余計なことまで気を使っているからいけないんだけどね。
ところでゆき、彼氏元気?
<ゆき> まぁ色々あるけど、続いている…。
<しのぶ> よかったね。じゃもうすぐゴールインじゃないの?
<絹代> そうよね。もう2年ぐらいになるでしょ?
<ゆき> うん。でも駄目なのよ。彼って何て言うのかな。うまく言えないけど、こっちが逃げようとすると寄って来るけど、こっちが掴もうとするとすぐ逃げていっちゃうの。だけど、何故か嫌いになれないの。
<絹代> 要するにいい加減なヤツなんじゃないの? 私、誠実じゃない男って許せない。ほんとサソリの毒出したくなっちゃうわ。
一同 笑う 。ゆき、何度も携帯に目をやり、ため息をつく。

<ゆき> 私だってそうよ。だけど問題はね、彼が誠実なのか、そうじゃないのかすらわからないの。一緒にいる時は楽しいし、何の疑いもないのだけれど、別れた途端、全部夢だったような気がしてくるの。
<千比呂> だけどそういう男の人って見方を変えるとすごく素敵だよね。
<ゆき> 人の事だからそんな風に言えるのよ。尽くしたからって惚れてくれるようなタイプじゃないし、むしろそんなのうっとうしそうだしね。
深くため息をつくゆき、ビールをぐっと飲み干す。みんな美味しそうに料理をつまむ

<千比呂> 私の個人的趣味から言わせてもらうと、そういう男の人は好きだけどね。稀少価値よ。そんな映画の主人公みたいな人。生活臭がしなくって。でもゆきはこれ以上あまり深入りしない方がいいかもしれない。もしかしたら、かなり痛い目にあうかも…
千比呂煙草を深く吸い込む

<絹代> もしかしたら、じゃなくて確実傷つくよ。やめておいた方がいい。
怒らないで聞いて、他に女性がいるということはない?
<ゆき> それは、、ない。ないと思う。
<絹代> ならいいけど、本当に愛した人から裏切られると一生の傷だからね。ずーっと生きている限り残るから…
髪をかきあげながら宙を見つめる絹代

<ゆき> そうよね。私だってもし裏切られたら… 絹代はあまり話してくれないけど、やっぱりそんなことがあったの。
<絹代> まぁね。まだ消化しきれてないから、結局こうして一人なのよねぇ。そんなことを引きずっても自分が苦しくなるだけなのにね。性格ってなかなか変えられないよね。
しきりに携帯を気にするゆき

<千比呂> 「裏切られたら」って二人とも言うけど、元々人と付き合う以上、そういうことも覚悟の上じゃないかなぁ。裏切るというと言葉が悪いけど、自分の魅力が足りなかったから他の人に気持ちが動いたのかもしれないし。そんな事を恐れていたら人を心から愛する事なんてできないじゃない。ゆきや絹代がそうだといっているわけじゃないけどね。
<しのぶ> 理論的にはね。でもそれを本当に出来るほどの強い女性は、なかなかいないと思うわ。現実にはね。だからこそ少しずつ二人の歴史を積み上げ、それで誰にも負けない絆を作り上げていくんだと思うなぁ。もっとも私のように相手が思ってくれているのに気づくのに一年、自分が思っているのに気づくのに一年、終わったのがわかるのに一年といったタイプは千比呂とは違う意味でそれをしているのかもね。
一同大笑い

<ゆき> いくらしのぶが慎重な山羊座といっても、それはオーバーよねぇ。
ゆきすでに口が回らなくなっている。またグラスを一気にあける。催促するようにグラスを差し出す

<ゆき> 私の悪い癖は本気になるとすぐ結婚の事を考えちゃうところなのよね。そこのところを離して考えられないの。あーいやだ、こんな性格。
ゆき、又飲み干しグラスを差し出す。しのぶが心配そうにみんなの顔を見る

<ゆき> 女なら多かれ少なかれそういうことあると思う。それをいとおしく思ってくれる男もいるけど、けむたく思う男もいるわけよ。彼は100%後者。明日の事もわからないのに、そんな先の事まで、まだ決められないってな感覚よ。あぁぁバカらしい。
<絹代> あんまり思いつめない方がいいよ。愛の確信が得られない時ってほんと辛いもんね。常に不安というか。この世でたった一つのことを求めているのに、それが思うようにいかないんだものね。すべてのことが崩れて行っちゃうよね。
<ゆき> そうなんだよね。私だって他の男ならもうとっくに止めてる。でも彼とはできないのよね。二人でいる時の彼の優しさとか、こんな人は居ないと思える 特別な魅力。言葉ではうまく表現できないけど。
<しのぶ> なるほどね。
ゆき、立ち上がろうとしてよろける

<千比呂> 大丈夫? そろそろお開きにした方がいいかもね。
ゆき、立ち上がりフラフラと歩き出す。千比呂、お店の人に気遣い、軽く会釈する

<千比呂> どこ行くの?
<ゆき> で、ん、わ。
<千比呂> 止めたほうがいいよ。そんな酔ってる時。彼だって迷惑でしょ。
<ゆき> いいの。どうしても声が聞きたいんだもの。
しのぶ ゆきの腕を掴み席に座らせる

<千比呂> じゃもう少し、醒めてからにしたら?
ゆき首を振り電話をかけに行く。何やら話しているゆき

<絹代> 平気かな…ゆき。
<千比呂> 止めてもダメだからしょうがない。かなり重症だね。でも子供じゃないんだし、後は彼女が決めることよね。
そろそろ帰ろうと、しのぶがみんなに目配せする。戻って来たゆきを連れて店を出る
――レストランから駅へ
大勢の人が行き交う ゆきは一言も口をきかない

<千比呂> ゆき、彼と話せたの?
<ゆき> 留守電、どこにいるんだろう? あぁもうヤダ。
――新宿駅構内

<千比呂> じゃ今日はこれで解散ね。みんなで又会おうね。ゆき元気でね。
<しのぶ> 私は結論を急がず、ゆっくり様子を見たほうがいいと思うよ。
<絹代> 何かあったらいつでも連絡して、力になれることは何でもするから。
頷くゆき。

<ゆき> みんなありがとう。今日はごめんね。湿っぽくなっちゃって。
<絹代> なーに言ってるの。そのための友達でしょ。
みんな解散する。まだどこかへ行きたそうなゆき。みんなが帰ってしまうのを見届けると、立ち止まり直樹にメール

「今、みんなと別れたところ。今晩行ってもいい?
会いたいの、新宿で少し時間つぶしているから、見たらすぐ連絡して」

スタバに入り、時間をつぶす。1時間経っても直樹からは電話もメールもない。ついに諦めて家に帰る。


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