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12星座の物語
第十話「ずれ始めた歯車」

――節子のホテルルーム
節子、メールのチェックを始める

美奈からのメール受信

――――――――――――――
節子へ
ロスはどうですか。添乗中にメールする内容でもないんだけど、急いで伝えておきたいと思ったの。今回は例の石和さんと一緒なんでしょ。実はちょっとニュースがあってね。 絶対に怒らないでね。
――――――――――――――
<節子> (独り言) いやな感じのスタート、何なのよ
――――――――――――――
これ本当に偶然なの。
実はクラス会があったんだけど、この前皆で会ったとき、
グローバルに友達がいるって言ったでしょ。
覚えているかなぁ。ゆきって言うんだけど、クラス会で久しぶりに会ったの。
それで同業ということもあって盛り上がって、2次会まで一緒に行ったわけ。
当然のことながら彼氏の話になって、そうしたら彼女は、
もう2年以上付き合っている彼氏がいて、その彼の自慢話になったの。
まぁお互い飲んでいたし、わかるでしょ?
何の話だったか、突然
「彼、石和直樹って言うんだけど、同じ業界とは言っても美奈は会ったことないでしょ?」
って言うわけ。
それで私はすっかり目が覚めて「石和さん?」て念を押したのね。
まぁ、これを節子が知ったからと言って何かが変わるのか、
私にはわからないけど、やはり報告だけはしておこうと思って。本当にごめんね。
でも偶然こんな話を耳にすることになってしまったの。
知りたくないっていっていたのに、ごめんなさい。
勿論後は節子の考え方だけど、早めに伝えておけば、対処できるかと思って。
長々書いちゃったけど、わかってくれたかなぁ。
もしスカイプで話したほうがよければ、連絡してね。
日本時間の夜10時以降ならだいたいは家に居ます。

心配でたまらない美奈より
――――――――――――――
憮然とする節子。こんなこと知らせてくれなければいいのにと、美奈に対して八つ当たりとも言える怒りがメラメラらと湧いてくる。直樹にこれをどうぶつけるべきが、途方にくれる

――直樹のホテルルーム
直樹、部屋に戻ってしばらく考えてから、ゆきの手紙を読む

ゆきの手紙

――――――――――――――
海外にいるときまで、こんな手紙は書きたくなかったのにごめんなさい。
でも手紙だと自分の気持ちを素直に書けるから不思議です。
このことは言おうかどうしようか、本当に迷いました。
でも嫌われても、やっぱり言うしかないと思い手紙を書くことにしました。
メールだとすぐ返事が来そうだし、私もまだそこまで心の準備ができていないんです。

この前、直ちゃんが学生時代の友達と会うって言った日、実は私、後をつけてしまったんです。怒らないでお願いだから最後まで読んでね。
何か胸騒ぎがして、どうしてもそのまま帰ることができなかったの。
男の友達だと思っていたけど、とっても綺麗な女の人でした。そして恋人同士のように親しげな姿に、ショックでその場から動けなくなってしまいました。
あれは一体誰なのか、会うたびに聞きたかったけど、どうしても怖くて聞けませんでした。あの人が学生時代の友達なんでしょうか。それなら何故私に紹介してくれないの? あの後二人でどこに行くのか確かめたかったけど、事実を知るのが怖くて…断念しました。
それに絹代に偶然会っちゃったんです。私が立ちつくしていたので、色々と心配してくれたの。もしあのとき絹代に会っていなかったら、どうなっていたかわかりません。夜遅くまで私の話を聞いてくれたんです。
こんな私の行動を責める気持ちもわかります。でも直ちゃんにも非はあると思います。本当に関係ないなら、ちゃんと説明して欲しいです。私だってこんなことはしたくないんです。
でも思い出すと色々と想像してしまい、頭がおかしくなりそうです。 それからこの前、松原さんにも会いました。これも偶然だったんだけど、一緒に食事をして直ちゃんとのことも相談しました。色々と話したら少し気持ちも落ち着きました。 もしかしたら、彼から直ちゃんにメールがあるかもしれません。
東京に戻ってきたら、話を聞かせて下さい。本当のことを聞くのは怖いけど、裏切り続けられるよりは、ずっといいと思います。私も覚悟ができてきました。

ゆき
――――――――――――――
<直樹> (独り言) 後をつけるなんて。そんなことされたら、どんどん気持ちが離れるに決まっているじゃないか。それにしてもちょっとヤバイなぁ。孝司にメールして様子を聞いてみるか…。
一通りメールをチェックして、平常心を保ち、節子の部屋に戻る直樹

<節子> もう終わったの?
<直樹> うん。大急ぎで終わらせたよ。早く会いたいからね。もうそちらも終わった?
<節子> うん。
直樹、部屋に入ろうとする。節子軽く直樹を押しながら

<節子> ねぇ、ゆきさんって誰?
<直樹> えっ、いきなり何?
<節子> 彼女なの?
<直樹> どういうことなの?
<節子> 彼女がいたっていいと言ったのは私だし、それを責めているんじゃないの。でもここまで深刻な仲の人がいるのは、はっきり言ってショック。
<直樹> ちょっと落ち着いて、どういうことなのか、話してよ。
鋭い眼差しで直樹をにらむ節子

<節子> 私の親友に美奈って言う子がいるの。この前会ったときに、私好きな人がいるって直樹のこと話したの。そしたら彼女の同級生の友達もグローバルにいるってことになって。まぁ、細かなことはいいや。とにかくこのメール見て。
直樹、メールに目を通し、しばらく沈黙

<直樹> 確かにゆきという子はいるし、付き合ってもいる。でも君の友達の美奈さんが聞いたのは彼女からの話だけでしょ。彼女が僕をどう思っているかと言う話でしょ。そこには僕が彼女をどう思っているかはまったく入っていないじゃない。
<節子> そうよね。じゃ入れば違うの? ていうか、もうヤダ、ヤダ!
節子、激しく頭を左右に振る

<節子> じゃ一体どんな関係なのよ?  いいや、そんなこと聞いたってどうしようもない。要するに、彼女と戦ってまで直樹を欲しいか、よね。私やっぱり結構ショックみたい。とにかく今日は部屋に帰って、じゃ。
必死で感情を抑える節子。このまま一緒に居たら、爆発するのは自分が一番よくわかっていた。直樹、有無も言わせぬ節子の気迫に、たじろぐ

<直樹> うん、わかった。でも結論を出す前にこれだけは忘れないで。節子への気持ちは本物だから、ただの遊びで始めたわけではないからね。節子が大好きだから、節子だからこうなったんだから。とにかく今は部屋に戻るね。悪い結論を出さないことを祈っているよ。そして僕にも自分の気持ちを言うチャンスだけは残してほしいなぁ。勿論、僕に対するそんな興味もないんだったら、しょうがないけど。じゃ戻るね…
うなずく節子。後ろ髪を引かれる直樹。でも節子の性格を考えると今はこのまま消えたほうがいいと思う。節子もどこにこの怒りをぶつけたらいいのかわからず、ドアを激しく閉める

――翌朝 ロビーで

<直樹> おはよう。昨日はすっかり後味が悪くなっちゃって、ごめんね。
<節子> うぅん、私こそ子供っぽい態度をとったと思って、反省しているの。でもね。やっぱりショックだったから、どうしようもなくて。こんなに動揺する自分も情ないけど、やっぱり直樹をかなり好きになっちゃったってことは再確認できたわ。
<直樹> ということはもう一度話すチャンスを僕にくれる?
<節子> うん、今晩また話そう。やっぱり私怒っているのかも。何もそんな関係じゃないのにね。バカみたい。とにかく今晩。
<直樹> わかった。ありがとう。じゃあとで。
二人、仕事に戻る


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