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12星座の物語
第一話「出会い」

直樹出発前日、ゆきと飲み、別れ際道端で。

<ゆき> じゃ 気をつけてね。
<直樹> わかってる、わかってる、いつものことなんだからさ。
<ゆき> でーも、今回は行く場所が場所だから!
<直樹> 大丈夫だよ。エジプトみたいな国の方がかえって安心なんだよ。
変な遊びもできないし、まったく心配の種がないじゃない?
<ゆき> えっ じゃ他ではしているみたいじゃない。
<直樹> ちょっと待ってよ。もっと素直に聞いてくれないかな。どこへ行こうと僕は君のことしか考えられないんだから。
<ゆき> それが信じられれば苦労しないんだけどねー。でもありがとう。
直樹、軽くゆきの頭をこづき

<直樹> じゃ行ってくるね。
ちょっと寂しそうに。

<ゆき> うん…本当に気をつけて…
成田空港。
あちらこちらに集まっているグループ、フライトの場内放送、ツアー参加のお客を集め、説明している直樹。

<直樹> えーと、入国に必要なのでここにサインしてください。
場内放送の声と混ざる直樹の声、出国カウンターへと消えていく一団。

エジプト・ピラミッド。
直樹のグループ、その近くにもう一つの日本人グループがいる。そのグループのツアコンがプリプリしながら現地ガイドと話している。横目でちらっと見る直樹、声を掛けるべきか迷う。見かねてついに声を掛ける。

<直樹> どうしたんですか。何かトラブル?
<節子> えぇ、ちょっと。ほらあの現地ガイド、観光の時間削ってまでお土産の店、お土産の店って言うから。
黙ってガイドの所へ走って行く直樹、突然アラビア語で何か話している。

<直樹> もう大丈夫ですよ。彼らにとっては土産からのマージンが大きいから。
<節子> そうなんですよね。わかっているけど、いつもいつものことで疲れちゃって。大切な話になると分からないフリするんですもん。でもすごいですね。今アラビア語で話してたでしょ。英語出来るツアコンは山ほどいるけどアラビア語出来る人には初めてお目にかかりました。
とんでもないというように微笑む直樹。

<節子> あれ、ところでお名前は?
<直樹> あぁ、失礼。石和と申します。
<節子> 小山です。よろしく。
改めて握手する二人。

<直樹> こんな所で会ったのも何かの縁、なんて言うと月並みだけど、よかったらぜひもう一度。
<節子> えぇぜひ。今晩お客様を寝せつけてからというのはいかがかしら。
<直樹> いいですね。ホテルはどちらですか。
<節子> オアシス。
<直樹> 僕はシェラトン、とにかく迎えに行きます。
<節子> 明日は早いんですか?
<直樹> 6時半かな。でも僕は慣れているから平気ですよ。小山さんは?
<節子> 私も早いけど大丈夫です。
<直樹> 9時までには行きます。
それぞれのグループに戻っていく二人。

夜 節子のホテルの部屋。
ツアーに出るたびに、新しい人には何度となく出逢った。しかし仕事が終わってクタクタになった後でも出かけようと思ったことは今まで一度もなかった。常に本能で行動する節子は迷うことなくすでに支度をしていた。部屋の電話がけたたましく鳴る。

<節子> Hello
<直樹> あ、石和です。昼間はどうも。今、下に来ているんだけど、もう出られるかな。
<節子> えぇ。でもどこへ行きます? それによって着替えた方がいいかなと思って。
<直樹> うーん…ちょっと町を歩いて、後はクラブでも、どうかなと思ったんだけど。 エジプトでクラブなんてなかなか粋じゃない?
<節子> そうね。行ってみたいわ。じゃ今すぐ降りていきます。
節子がエレベーターから降りて来る。思わずピューッと口笛を吹く直樹。

<節子> いやだー どうしたの?
<直樹> 似合うね。昼は昼でいいけど、やっぱりそういう恰好するとより光ってるよ。
<節子> ありがとう。そうはっきり言ってもらうと素直に嬉しくなっちゃう。
ねぇ、相性がいいってきっとこういう事なのね。だって今日会ったのに、もうずっと前から知っていたようにこんなに気楽に話せるんですもの。不思議~
<直樹> 本当だね。僕も同じ事を考えていた。
歩き始める二人。

<節子> 嬉しい。イスラムの国じゃ女一人なんとなく歩きにくくてね。
<直樹> そうだろうね。でも君はそんなこと全く平気なのかと思った。
<節子> まぁ普通の女の人と比べたらそうかもね。とにかく新しくって、危なそうでまだ人があまりしていない事が大好き!
<直樹> わかるなぁ。そんな感じだね。
<節子> やっぱりわかっちゃう? 普通はおとなしそうに見えるはずなんだけどなぁ。
<直樹> そりゃちょっと信じられないね。
<節子> 石和さんに演技してもダメね。これからは100%地でいきます。
<直樹> 最初っから地でいってたじゃない。
<節子> もうダメだぁ、ギブアップ
笑い合う二人

<直樹> そうそう、ところで、次のツアーはどこ?
<節子> 今のところロス。イヤんなっちゃう。
<直樹> 飽きちゃうよね。
<節子> 完璧にね。
カイロの町をブラブラし直樹の知っているクラブへ入っていく二人。

クラブの中。

<直樹> エジプトだとクラブと言ってもやっぱりホテルの中になっちゃうね。他にあまりないから。
入って行くと皆がサッと二人を注目する。特に目立つ容貌の節子に皆が振り返る。
節子は当然といったように堂々と入っていく。輝いている節子。

<直樹> やっぱり美人は違うね。注目の集め方が。僕も鼻が高いよ。
<節子> あら ありがとう。普通ジロジロ見られると嫌がる男の人が多いのに。前の彼なんて 本当にそう。やきもち焼きで。見られただけですぐケンカ。もっとも石和さんとは何もないんだから、妬くも妬かないもないけどね。
<直樹> いいやそれは違うな。何か君とあったとしたって妬かないよ。そもそもやきもち程ナンセンスなものはないと思っているから。
ウェーターが来る。

<直樹> そうか。結構いける方なんだ?こっちの方。
<節子> そうね。ちょっとした男の人には負けません。
おどけて言う節子。

<直樹> どこでそんなに腕を上げたわけ?
<節子> 学生時代。クラブのメンバーが皆飲んべえだったから。それにつられて。というより、私が先頭だったかな。
<直樹> そりゃ恐ろしい。まぁ負けないように僕も頑張るよ。
乾杯する二人。

<直樹> この新しい出会いに乾杯!
<節子> カンパイ!ねぇねぇさっきのやきもちの話だけど、よく「愛してるからこそ妬く」なんて言うじゃない?
<直樹> それは違うと思うよ。単なるエゴだよ。だって常に失ってもいいという覚悟が なかったら本当の恋愛なんて出来ないと思うよ。だからある意味真剣にも、情熱的にもなれるんじゃないかな。
<節子> そうかな。私は結構単細胞でやきもちや妬きの所があるの。でも石和さんって 一人の人を情熱的に愛するタイプには見えないけれど。実際どうなの?
<直樹> そう? 瞬発力は絶対負けないよ。持久力になるとちょっと自信ないけど。
<節子> 即ち、浮気っぽい。
<直樹> ちょっと待ってよ。人聞き悪いな。普通初めて会った女の人にこんな話はしないのに、何故かベラベラ余計な事しゃべっちゃった。
<節子> ねぇ、ひょっとして私の事、女として全く見てないんじゃないの。
<直樹> 冗談じゃない。見てないなんて。これ以上は照れるからまた今度。
<節子> 照れるようにはまったく見えないけどね。人見知りしないし、明るいし。
<直樹> 「まったく見えない」は嬉しいな。僕はいつも二面性を持ってる人間ほど魅力的だと思っているから。悪い意味ではなく。まぁいい加減と言ってしまえばそれまでだけどね。
<節子> その理論から行くと私は最悪。まったくの一面性。
笑う二人 何度も乾杯を繰り返し飲む。 女だから飲めませんといった演技を全くしない節子。直樹の話を聞きながら、ちょっと難しいと眉間に皺を寄せて一生懸命聞いている。

<直樹> ところで、一般的かつ愚問だけど、彼氏はいるの?
<節子> いない。
<直樹> 本当?
<節子> 石和さんは?
<直樹> いない。
子供っぽい表情で笑う節子。「やったね」といいながら、はしゃいで乾杯する。

<直樹> ちょっと踊ろうか。
<節子> うん。
満面に笑みをたたえて踊る節子。それを見つめてどうしもこの明るさを自分に引き付けておきたいと願う直樹 二人席に戻る。

<直樹> 踊り上手いんだね。
<節子> そう?ストレス発散には一番ね。次の日が休みだったら最高だけど。
<直樹> そうだよね。心残りだけど、明日もあるし、そろそろ帰るか。
<節子> そうね。まだ居たいけど明日二日酔いじゃ辛いものね。
<直樹> そういうこと。
さっさと出て行こうとする直樹。

<節子> あれ、支払いは?
<直樹> もう済んでる。
節子の背中を押す直樹。

<節子> えぇそんなの困る。いっぱい飲んじゃったのに。
<直樹> バカだな。そんなくだらないこと。金は天下のまわりものと言うじゃない。
<節子> 本当にすみません。じゃ次は私にご馳走させてね。
<直樹> うんわかった。期待して待ってるよ。
ホテルの前のタクシーに乗り込む二人。

<節子> げぇ、もう二時半か。
<直樹> ほんと楽しい時って時間がたつの早いよなぁ。嫌いな相手だとすごく長いのに。
<節子> 明日、あぁもう今日ね。アレキサンドリアの日帰りだっけ?
<直樹> そちらはいよいよイタリア入り?
<節子> そう。だからこれでお別れね。
<直樹> 東京は何日着?
<節子> 来週の木曜。
<直樹> ずいぶん長いな。あと十日もあるんだね。こっちはあと三日。じゃ又東京でということで。
<節子> あら連絡なんて取れるの?お互い何も知らないじゃない。
<直樹> あぁそうか。会社わかってるからと思ったんだけど、そういうのって調べ上げた感じでいやらしいよな。やっぱりはっきり言っておいた方がいいよね。もしよければだけど。
すぐに名刺の裏に自宅と携帯番号を書き込み渡す節子。直樹はふとゆきの事を考え、そのまま名刺だけ渡す。

<直樹> とにかく会社にばかり居るから。ここにかけてくれるのが一番確実。すぐ捕まるから。
<節子> じゃ東京で。東京で会っても今のままステキでいてね。
<直樹> 今のままって?
<節子> ほら旅先で会った人って東京へ帰ってから会うと全くイメージ違うっていうのあるじゃない。
<直樹> そう? さすが経験者。気をつけまーす。
<節子> 今日はホント楽しかった。ありがとう。
タクシーを降りて見送る節子 泣き出しそうな顔をしながら手を振っているちょっとテレた顔をしながら直樹去って行く。


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